通信制高校・高等専修学校ニュース

スムーズな進学にこだわらない 不登校の後、自分で歩み始めた2人の話

専門家によるアドバイス 不登校脱却のポイント

不登校を経験した若者が、その困難をどのように乗り越え、いま成長を続けているか――。当時の心境と現在の思いについて、不登校経験者の若者2人に話を聞きました。聞き手は、かつて2人が相談に訪れた〈札幌市若者支援総合センター〉館長の松田考さん。2019年12月7日、札幌市で保護者らを前に行われた公開インタビューの一部を採録してお届けします。

若者2人のプロフィール

A男/16歳。小学校には問題なく通っていたが、中学1年で不登校に。高校へは進学せず、同センターのサポートを通じて就職。週5日の工場勤務をこなしている。

B子/21歳。中学校・高校・専門学校それぞれで不登校に。現在アルバイトをしながら、資格取得に向けてもう一度専門学校で学ぶことを考えている。


 

高校へ行かず、就職の道を選んでみた ――A男の場合

松田 A男が学校へ行かなくなった理由は人間関係?

A男 人間関係もあったけれど、気がついたときには学校へ行く気が無くなっていました。

松田 その時、親にはガミガミ言われなかった?

A男 最初は言われたけれど、そのうち親もあきれたのか何も言わなくなった。

松田 いま「あきれた」と言ったけれども、あきれられたような気は自分でもした?

A男 自分でも「あきれられてもしょうがないな」とは思いました。

松田 その時、親にはどうしてほしかった? されたり言われたりして、うれしかったことや、逆に嫌だったことはある?

A男 不登校になり初めのころ、しつこく言われるのは嫌だったけれど、それ以外は別にありませんでした。

松田 不登校の時期には、毎日どんな過ごし方をしていたの?

A男 う~ん、毎日が暇で暇で……。何もなく時間が過ぎ去っていくのが、悲しいくらいでした。もったいないと思った。当時はフリースクールの存在も知らなかった。

松田 ゲームをして過ごす人も多いと思うけれど、それで充実というよりは、ただ時間をつぶすだけになっていることも多いんじゃないかな。A男は、どうだった?

A男 ゲームも飽きますね。

松田 振り返ってみて、親に対してどんな思いがある?

A男 申し訳なかったと思っています。

松田 高校へは進学しないで、いま働いているわけだけれど、進学しなかった理由を教えてくれる?

A男 高校へ行く気もあったけれど、中学時代の不登校のくせが身についてしまって、高校でもまた不登校になるんじゃないかと心配がありました。そうなったら学費も無駄になってしまうし……。

松田 A男には働いてみたい気持ちがあったので、就職の道を選んだけれど、ゆくゆくは高校へ行ってみたい気はする?

A男 考えてはいるけれど、中学時代は不登校で全く勉強していないから、まず入試が心配で……。

松田 あとは入学できても勉強についていけるかどうかという心配もあるよね。でも、たとえば、たいていの通信制高校は学力重視で入学者を選ぶわけではないので、学びたいという意欲があれば入学については大丈夫だと思う。入ってからの勉強についても、生徒をサポートするしくみが、それぞれの学校にあるはずなので、学校説明会などの機会に聞いてみるといいよ。

 


 

ネットでの交流が進学や仕事での励みに ――B子の場合

松田 じゃあB子の最初の不登校のいきさつを教えてくれる?

B子 中学2年生で、体調のせいで朝起きられなくなり、それと他の理由もあって、担任の先生とどうにも合わなくなりました。それで教室へ入りたくなくなり、学校へも行きたくなくなりました。

松田 B子は高校と専門学校でも不登校になったというけれども、いまアルバイトを続けることができているよね。

B子 不登校の時にSNSで自分と同じような境遇の人と交流できたのが励みになっています。ネット上だけれど、他の人の事情をいろいろと知ることができたのはよかったと思います。

松田 親にしてみれば、ただスマホをいじってゴロゴロしているように見えることもあるだろうけれど……。

B子 たしかに私も親にめっちゃしかられた。でもプラスになることも多いと思う。場合によるけれど……。

松田 その「場合」を教えてよ。

B子 よくできたコンテンツを見ると、けっこう勉強になる。でもどんなサイトを見たり、ゲームをしたりするかは本人次第。親がどうこう言っても仕方ないかもしれない。

松田 親も不安なのです。「子ども本人を信じて、立ち直るのを待っている」という声は親からよく聞くけれども、いつ暗いトンネルを抜けるのか分からないものだから。子ども本人がどうしたいか、どんな助けが欲しいかを口にしないと、どうしても親の方からあれこれ言いたくなってしまう。

B子 子ども自身、トンネルの出口が分からない。だから、私だったら親にトンネルを一緒に歩いてほしい。

松田 「一緒に歩いてほしい」と……具体的には?

B子 う~ん。たとえばスマホをいじっているのが気になるのなら、なにか子どもの見ている動画を一緒に見てみるとか。そうすれば感想を言いあえるし。

松田 A男はどう思う?

A男 親も一緒に見るというのは、いいですね。少なくとも、そこでコミュニケーションが生まれるから。

松田 これは会場にお越しの保護者に向けての発言ですが、子どもとの距離の取り方、近づき方は難しいものですよね。自分の子どもが相手だと、専門家によるアドバイスもなかなか実行できなかったりする。暗いトンネルの中を一緒に歩いてくれる存在が、親にとっても必要だと思う。私どものような公的な相談支援の拠点などをそれぞれの地域で見つけて、もっと頼ってみたらどうでしょうか。


 

自分の進路をオリジナルに切り拓く

 

松田 さて、いま目標にしていることを聞かせてください。まずB子から。

B子 働きながらもう一度専門学校で学び、調理師の資格取得を目指したい。自分と同じように生きづらさを抱えた子どもを助けられるような仕事ができたらいいです。保育士や社会福祉士などが子どもに直接関われる職種だけれど、調理師でも「食」を通じて子どもたちを癒したり、励ましたりできると思うし、そんな職場で働きたい、という思いがあります。

松田 それくらい目標がはっきりしていると、いいね。

B子 ネットで交流してきた人の影響と、いま一緒に同じ目標を目指している人がいるので。

松田 よい刺激を受けたり、同じ目標に向かって励まし合ったり、人との出会いや交流は将来に向けて自分を育てるうえで大切だよね。学校復帰が最優先ではないけれど、いま不登校の人も、よい出会いを増やす機会として進学や学校復帰を考えてみたらどうだろう。A男の目標は?

A男 自分でお金を稼いで、自由に好きなことをして生きていきたい。

松田 A男には、はじめに高校進学の話も出たけれど、高卒資格をはじめ、いろいろな資格は、本当に必要を感じてから取得に向けて勉強した方が頑張れる人もいるだろうね。スムーズに進学する、いわゆる普通の進路だけではなく、A男やB子のように自分らしい幸せのかたちや充実感を柔軟に求めるオリジナルな進路もあっていいと思う。

 2人とも今日はたくさんの人の前で率直に話してくれて、どうもありがとう。