不登校とは何か ~「不登校」の定義~

不登校とは何か

不登校の前史

最初に、小中学生の不登校が社会にどう受け止められてきたかをごく簡単に振り返ってみます。

日本で「学校へ行かない/行けない」児童生徒が社会問題として取り上げられるようになったのは、早くも1960年頃でした。当時の不登校は「大きな不安で学校へ行けない症状」ととらえられ、「学校恐怖症」と呼ばれていました。その後「受験競争のストレス」「優等生の息切れ」など、学校へ行けない原因がさまざまな角度から探られ、「学校恐怖症」から「登校拒否」へと呼び方が変わっていきました。

1980年くらいまでは、多くの場合、不登校であっても子ども本人には「学校へは行くべきで、自分も行きたいのだけれども、行けなくてつらい」という思いがあったようです。その一方で社会一般の理解はまだ浅く、不登校を「怠け」や「生活の乱れ」「親の甘やかし」とばかり見なす人も多かったと言えます。

「年30日以上欠席」が定義

文部科学省が「不登校」という名称を使い始めたのは1998年度です。それまでは「学校ぎらい」の呼称で「年50日以上欠席」を調査対象としていましたが、同年度に「年30日以上欠席」に改めました。「何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち病気や経済的理由によるものを除いたもの」――これが文科省による不登校の現在の定義です。

「どの児童生徒にも起こりうる」

かつては、受験のプレッシャーに押しつぶされた優等生か素行不良で学習意欲のない子どもが不登校になるものと一面的・短絡的に考える向きもありましたが、1992年度には既に文部省(当時)も不登校は「どの児童生徒にも起こりうる」という認識を示しています。不登校という呼び方が定着している現在、問題の要因や背景の理解も、以前に比べると深くなりました。それは不登校の児童生徒が増え、社会の関心が一段と高まったことの裏面でもあります。

いじめ自殺で意識変化

不登校の実態がより詳しく分かってくると「学校へ行くのが当たり前」「学校へは必ず行くべき」という社会通念に少しずつ変化が生じてきました。また2011年に大津市で起きた中学校2年生男子のいじめ自殺が大きな契機となり、「死ぬくらいなら学校へ行かなくてもいい」という意識が児童生徒とその親(保護者)に広まったと言えます。2013年度には、それまで5年連続で減少していた不登校の児童生徒数が増加に転じました。

さまざまな原因

不登校の原因となるのは、いじめだけではありません。友人や先生との人間関係が原因となったり、学業不振が理由だったり、本人もなぜか分からないまま通学する気力が失せてしまったり、あるいはそれらいくつかの要因が重なっていたりと様々です。
近年では学習障害や注意欠陥/他動性障害なども原因に潜んでいるのではないかと関心を集めています(不登校の理由やタイプについては、後の章で詳しく触れます)。不登校は日本だけに見られる現象ではありませんが、諸外国とは問題の性質が異なる点もあるようです。たとえば一般に欧米では不登校が親(保護者)による虐待と見なされる場合もあり、学校に合わない児童生徒に対応するカウンセラーや代替校の整備が進んでいます。そのため不登校は、これまでのところ大きな社会問題になっていないのです。他方、受験競争のストレスが強いと言われる韓国や香港では、近年、不登校が増えており、政府は公的な代替校の開設に乗り出しています。

不登校への対応方針

不登校への対応については、これまで文科省が幾度か方針を示してきました。新しいものでは2019年に出された「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知に、小中学校や高校が問題の対処に際して則るべき基本的な考え方が示されています。このうち不登校の子どもと親(保護者)にとって特に大切な点に絞ると、次の3つになります。

(1)不登校は、児童生徒に必要な休養期間となったり、自分を見つめ直すきっかけになったりもする。学校復帰だけを目的にしないこと。
(2)不登校の児童生徒一人ひとりの事情に合わせて、学校復帰のための環境づくりに努めること。
(3)場合によっては、教育支援センターや不登校特例校、フリースクールなど、関係各所と積極的に連携し、児童生徒の社会的自立への支援を行うこと。 

このほか、いじめや暴力行為を許さない学校づくりや、児童生徒・親(保護者)・教員の間でのスクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーの活用などが、不登校の防止や解決のために重要な取り組み課題として挙げられています。

こうした取り組みは、これまでにも個々の学校でなされてきてはいるのですが、個人レベルでも社会レベルでも不登校の問題はなかなか容易には解決に至りません。不登校が長引きそうなときは、家庭だけで抱え込まず、地域の相談機関などの力を借りて根気強く問題に対処し続けることが大切です。


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不登校でお悩みの方へ
~不登校について知っておいてほしいこと~

目次 (各記事にリンクしています)

不登校とは何か ~はじめの一歩~【現在のページ】
不登校の前史/「年30日以上欠席」が定義/「どの児童生徒にも起こりうる」/いじめ自殺で意識変化/さまざまな原因/不登校への対応方針


不登校のタイプ
不登校 6つのタイプ/「不安など情緒的混乱」型/「無気力」型/「学校生活上の影響」型/「あそび・非行」型/「意図的な拒否」型/「複合」型/不登校は「病気」なのか?/不登校の経験で「人に優しくなった」


データで見る不登校

不登校の現状/将来の見通し/不登校でも進学に希望


中学生の不登校 ~不登校でも中学は卒業できる?~
不登校でも中学は卒業できる?/出席日数・調査書・高校受験/不登校でも高校受験はできる?/「不登校でも出席扱い」になる方法/できるだけ学校との関わりを保つ


不登校 早期発見のために
・不登校 早期発見のために(前兆を見逃さない/子どもが家庭で見せる兆候/子どもが学校で見せる兆候)
・親自身のメンタルケア(不登校が長びく覚悟も/ストレスをため込まない/気持ちをコントロールする/段階(1)強い不安/段階(2)他者批判/段階(3)自責の念/段階(4)前向きな姿勢/粘り強く対処し続けるために/専門家の助けを借りつつ)
・ストレス・不安を軽くする(専門家・経験者の話に学ぶ/「うちの子だけ」ではない/親だけで頑張らない/学校復帰にこだわらない/先行きを悲観しない/あせらずに待ってみる/「親の会」など、話せる場を持つ)

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不登校からの脱却ー再進学ー不登校はマイナス体験じゃない。立ち上がることで、つまずきの意味が変わる

つまずいた子どもに親や先生、友だちは言うかもしれません。早く立ち上がりなさい、と。でも、そんなことは彼らにも分かっています。原因はどうあれ、いつまでもこうしてはいられないと、みんな内心は焦っているのです。でも、立ち上がるには、少しの勇気と何かのきっかけが必要です。

不登校からの脱却ー葛藤を乗り越えるー不登校・引きこもりの子を持つ親たちへ

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小学校高学年から中学校にかけては思春期の入り口です。この時期に子どもは大きな環境変化を迎え、それが不登校をはじめとするいろいろな問題のきっかけになりやすいことはご存知かと思います。いま講演をお聞きいただいているお母さん方、お父さん方も、もちろん思春期を体験したはずですが、昔のことでもありますし、子どものことを理解するうえで大切な前提ですから、ここで一緒に思春期の環境変化を振り返ってみましょう。

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ただし、本人にストレートに尋ねてみても、はっきりとそう認める人は少ないでしょう。というのも、上に挙げたような感情にとらわれていても、それを隠して生活しているからです。学校や友人の間では、なおさらです。ここにある感情は何でしょう?

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