データで見る不登校 ~不登校の現状と将来の見通し~
データで見る不登校
不登校の現状
2018年度の不登校の児童生徒数は、小学生4万4841人(0.7%)、中学生11万9687人(3.6%)、高校生5万2723人(1.6%)。カッコ内は全児童・生徒数に対する割合です。少子化で全児童生徒数は年々減っているものの、不登校の児童生徒数は増加傾向にあります。
不登校の小中学生の割合は、2013年度以降伸び続けています。小学校1万9974校のうち1万2690校、率にして63.5%の学校に不登校の児童が在籍しています。中学校では1万405校中9302校(89.4%)、高校では5422校中4433校(88.3%)に不登校の生徒が在籍しています。すでに不登校は、とくに中学高校では、ほとんどの学校に見られる珍しくない問題、けっして特別ではない問題となっています。
不登校の児童生徒への働きかけが効果を上げたかどうかを調べた数字があります。いま中学生だけを見てみると、指導の効果があって登校できるようになったのは、不登校生徒数の26.4%に留まります。好ましい変化があったものを含めて残り73.6%は不登校のままです。
[この項、データの出典は「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」]
将来の見通し
不登校問題の将来の見通しは、残念ながら明るくありません。日本財団が2018年に発表した報告「不登校傾向にある子どもの実態調査」によると「不登校傾向」の中学生は推計で約33万人。全中学生の10人に1人という割合です。これは文科省の調査による不登校の中学生数の約3倍です。
この調査は全国の中学生約6500人を対象にしたもので、不登校傾向の中学生約33万人の内訳は次の通りです。
○「1週間以上連続で学校を休んだことがある」・・・1.8%(中学生全体で推計約6万人)
○「登校はするが、教室には行かない/教室には行くが遅刻や早退が多く授業への参加時間が少ない」・・・4.0%(同約13万人)
○「教室で過ごすが、心の中では学校がつらい」・・・4.4%(同約14万人)
不登校に関する文科省の調査だけでは見えてこない実態が浮き彫りになりました。
不登校でも進学に希望
中学生約12万人、高校生約5万人――不登校の生徒数は減少の様子を見せません。しかし、そう悲観しなくてもよいと思える材料があります。それは不登校経験者の進学率です。
前に触れた文科省による不登校の中3生の追跡調査(2014年発表)では、不登校経験者の高校進学率が85.1%(前回調査65.3%)と大幅に増加しています。また高校中退率は14.0%(同37.9%)と大幅に下がっています。つまり、中学で不登校になっても、多くの生徒が高校進学をかなえているということです。さらに大学・短大・高専への進学率は合わせて22.8%(同8.5%)と向上していますし、就学も就業もしていない割合は22.8%(同18.1%)と減少しています。どちらも望ましい傾向です。
不登校に対応する国の施策(いじめ防止、中1ギャップ対策、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの活用事業など)は一定の効果を上げているようですが、問題の根本的な解消には結びついていません。
むしろフリースクールや通信制高校のように不登校生徒に心機一転のチャンスを提供する場が存在感を増しています。とくに通信制高校は、中学校でつまずいた生徒にはハードルが高くなってしまった全日制高校(入試に合格し、そこで勉強を続けること)に代わる大切な進路の選択肢になっています。近年の学校数・在籍生徒数の伸びからも、そのことが分かります。
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不登校でお悩みの方へ
~不登校について知っておいてほしいこと~
目次 (各記事にリンクしています)
不登校とは何か ~はじめの一歩~
不登校の前史/「年30日以上欠席」が定義/「どの児童生徒にも起こりうる」/いじめ自殺で意識変化/さまざまな原因/不登校への対応方針
不登校のタイプ
不登校 6つのタイプ/「不安など情緒的混乱」型/「無気力」型/「学校生活上の影響」型/「あそび・非行」型/「意図的な拒否」型/「複合」型/不登校は「病気」なのか?/不登校の経験で「人に優しくなった」
データで見る不登校【現在のページ】
不登校の現状/将来の見通し/不登校でも進学に希望
中学生の不登校 ~不登校でも中学は卒業できる?~
不登校でも中学は卒業できる?/出席日数・調査書・高校受験/不登校でも高校受験はできる?/「不登校でも出席扱い」になる方法/できるだけ学校との関わりを保つ
不登校 早期発見のために
・不登校 早期発見のために(前兆を見逃さない/子どもが家庭で見せる兆候/子どもが学校で見せる兆候)
・親自身のメンタルケア(不登校が長びく覚悟も/ストレスをため込まない/気持ちをコントロールする/段階(1)強い不安/段階(2)他者批判/段階(3)自責の念/段階(4)前向きな姿勢/粘り強く対処し続けるために/専門家の助けを借りつつ)
・ストレス・不安を軽くする(専門家・経験者の話に学ぶ/「うちの子だけ」ではない/親だけで頑張らない/学校復帰にこだわらない/先行きを悲観しない/あせらずに待ってみる/「親の会」など、話せる場を持つ)
不登校からの脱却ー再進学ー不登校はマイナス体験じゃない。立ち上がることで、つまずきの意味が変わる
つまずいた子どもに親や先生、友だちは言うかもしれません。早く立ち上がりなさい、と。でも、そんなことは彼らにも分かっています。原因はどうあれ、いつまでもこうしてはいられないと、みんな内心は焦っているのです。でも、立ち上がるには、少しの勇気と何かのきっかけが必要です。
不登校からの脱却ー葛藤を乗り越えるー不登校・引きこもりの子を持つ親たちへ
本当は学校へ行きたいけれども、このまま引きこもってもいたい――このように相反する二つの気持ちを抱える状態が葛藤です。葛藤を抱える本人は、どっちつかずで心が晴れず、とても苦しいのですが、それを前向きにとらえることが大切です。なぜなら、葛藤を建設的に乗り越えることは、不登校・ひきこもりからの脱却につながるからです。逆に、心に葛藤が生じていなければ、現状を変えようという気持ちは生じません。
不登校からの脱却ー失敗や挫折も自信の素になるー思春期の子を持つ親へ
小学校高学年から中学校にかけては思春期の入り口です。この時期に子どもは大きな環境変化を迎え、それが不登校をはじめとするいろいろな問題のきっかけになりやすいことはご存知かと思います。いま講演をお聞きいただいているお母さん方、お父さん方も、もちろん思春期を体験したはずですが、昔のことでもありますし、子どものことを理解するうえで大切な前提ですから、ここで一緒に思春期の環境変化を振り返ってみましょう。
不登校からの脱却ー若者の心理と不登校・引きこもり
現在、不登校や引きこもりの状態にある人だけでなく、日本の若者全般に巣くっている感情は次のようなものではないでしょうか。「自分は落伍者かもしれない」「自分は周囲に嫌われているかもしれない」「自分には能力がないのではないか」
ただし、本人にストレートに尋ねてみても、はっきりとそう認める人は少ないでしょう。というのも、上に挙げたような感情にとらわれていても、それを隠して生活しているからです。学校や友人の間では、なおさらです。ここにある感情は何でしょう?
不登校 体験談ースムーズな進学にこだわらない 不登校の後、自分で歩み始めた2人の体験談
不登校を経験した若者が、その困難をどのように乗り越え、いま成長を続けているか――。当時の心境と現在の思いについて、不登校経験者の若者2人に体験談を聞きました。聞き手は、かつて2人が相談に訪れた〈札幌市若者支援総合センター〉館長の松田考さん。2019年12月7日、札幌市で保護者らを前に行われた公開インタビューの一部を採録してお届けします。
不登校・引きこもりからの脱却ー高校進学が、大きなきっかけに
18歳のT君は、小学校の高学年から中学校にかけて不登校や引きこもりを経験。しかし、母親が中学生のための進学説明会に参加したことが、変化のきっかけとなりました。いろいろな学校のなかから自分に適した場所(通信制高校)を見つけたT君は卒業して、就職活動をするところまでたどり着きました。不登校・引きこもりの日々に何を思い、どう過ごしていたか。親との関わりはどうだったか。そして、何を機会に自分が変わったか。経験者であるT君本人に体験談を語ってもらいました。