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メモを取る高校生

家族の世話で忙しい中学生・高校生
【ヤングケアラー】に知ってほしい通信制高校・大学

専門家に聞く!統計データから見る!不登校脱却のヒント

父母や祖父母の介護、あるいは、幼いきょうだいの世話に追われる子どもが「ヤングケアラー」です。

中学生と高校生のなかにはヤングケアラーであっても、本人はそう思っていないことも多いようです。ケアの担い手として家族に頼りにされるのですが、負担があまりに重すぎると、勉強や進学に差しさわりが生じます。

今この記事を読んでいるあなたが家族の世話に時間を割いている中学生や高校生なら、どうか進学をあきらめないでください。家庭でのケアの負担を軽くしつつ、高校や大学へ進んで勉強する方法があります。

1日7時間以上の世話も―ヤングケアラーの実態

悩む女子学生

家事や介護はこれまでなら主に大人が担ってきました。しかし、共働き世帯やひとり親世帯が増えるにつれて、外で働く大人に代わって中学生・高校生が家事や介護を受け持つ家庭も増えています。

調査では「世話をしている家族がいる」のは中学2年生で5.7%、全日制高校2年生で4.1%と推計しています。クラスに1人か2人はヤングケアラーの生徒がいる計算になります。

「家計を支えるために働く」「炊事や洗濯などの家事」のほか、「きょうだいの世話」「病人の看護」「トイレや入浴の介助」「目の離せない家族の見守り」というのが主なケアの内容です。

このような世話に平日1日に費やす時間は下の通りです。

中学2年生 3時間未満 42.0%
      3時間以上7時間未満 21.9%
      7時間以上 11.6%
高校2年生 3時間未満 35.5%
      3時間以上7時間未満 24.4%
      7時間以上 10.7%

ケアの負担が重いと進学意欲も減退

親と落ち込む生徒

家庭でのケアの負担が重くなると、睡眠不足や疲労・ストレスの蓄積で心身に不調が生じます。学校の遅刻・欠席が増えたりします。急に部活をやめてしまいます。友だちと遊ぶ時間もなくなります。

しかし、家族の世話を任されるくらいしっかりした中高生ですから、遅刻や服装の乱れといった外面の変化がなく、そのため教員にはなかなか気づかれないこともよくあるのです。

ケアにあまりに多くの時間をとられると、家で落ち着いて勉強することが難しくなります。そのため学習意欲そのものが著しく減退するおそれがあります。ひいては進学がひどく面倒なことに感じられてしまいます。

福祉サービスでケア負担の軽減を

「大切な父母や祖父母の介助介護をし、小さなきょうだいの世話をするのは当たり前」と思うヤングケアラーは少なくありません。その思いはきっと正しいのですが、だからといって、家族の世話をまるまる一人で抱え込まなくてもよいのではないでしょうか。

役所に相談すれば、たとえば家事や介助介護を手伝ってくれるヘルパーを利用することができるかもしれません。ヘルパーという福祉サービスを利用するのは、なにも特別なこと、恥ずかしいことではなく、日本中で多くの家庭が役立てています。それによって家族のメンバーが外で働き続けることができたり、将来のために勉強を続けたりすることができます。

最初はヘルパーという他人に家庭のことを頼むのは抵抗があるかもしれません。しかし、そうした福祉サービスをうまく取り入れて、ヤングケアラーが少しでも自分に時間と体力と気持ちの余裕を持つことは、実は世話をされる家族にとっても有益なのです。

介助介護する時、世話をする時に、あなたはリフレッシュして家族に接することができます。穏やかな気持ちのあなたに面倒を見てもらった方が、家族もうれしいのではないでしょうか。将来のあるあなたがもっと自分の時間を持ってくれた方が、ケアをするあなたに家族が負い目を感じなくて済むのではないでしょうか。

通信制高校・大学を知っておこう

男性教師と生徒

「家族の介護があるので、大学に進学して家を離れることができない」
「ただもう忙しくて受験勉強がしたくてもできないから、いっそ高校進学はあきらめたい」

幼いきょうだいが成長したり、父母や祖父母が家庭での介助介護を離れたりして、いつかケアが終わる時が来ます。その時、あなたはどんな道を踏み出しますか。中学校や高校で勉強をやめていたら、残念ながら、選択肢はぐっと少なくなってしまいます。

もちろん、そこからあらためて勉強をし直すこともできます。頑張り屋のあなたなら、きっとできるでしょう。しかし、その遠回りは、しなくてもよい遠回りかもしれません。

ヤングケアラーのあなたに伝えたいことは、さしあたって2つあります。

ひとつ目に、「助けて」と言ってもいのです。住んでいる市町村の支援を受けて、時間と体力と気持ちにゆとりを持ってください。あなたの学校生活の充実と家庭でのケアとの間に、もっと適切なバランスがあるはずです。学校の先生やカウンセラーから役所などの窓口につないでもらうこともできるでしょう。相談してみてください。

ふたつ目に、通信制高校・大学を知ってください。家庭学習を中心に勉強して単位修得ができる通信制課程は、ヤングケアラーに適した進学先かもしれません。もちろん、上述の通り、ケアの負担の軽減が必要ですが、現状をすぐに変えることができない場合は、通信制高校・大学を視野に入れると進学をあきらめなくて済むかもしれません。

※本記事に引用したデータは厚生労働省と文部科学省の連携事業で三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が実施した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」(令和3年3月) です。