通信制高校・高等専修学校ニュース

不登校でも〈きょういく〉と〈きょうよう〉を

新しい学校選びの基準 ニュースクからのアドバイス

こんな新聞記事を読みました。

長野県上田市の、とある映画館は、不登校の子どもや生きづらさを抱える若者の居場所になっています。

この映画館を拠点にするシネマクラブに所属する生徒・学生らが平日の日中、館内清掃やポスターの貼り替えなどの作業に取り組むほか、月2回の上映会で名作映画やドキュメンタリーに触れています。

シネマクラブに登録する他の生徒や学生という仲間ができることはもちろん、活動を支援する大学教授や、同館を訪れる映画監督との交流の機会もあるそうです。

この活動に参加する不登校の中学生は、学校長の裁量で映画館に通うこと中学校の「出席」扱いになっています。

引きこもりだった子どもが上映会をきっかけに保健室登校ができるようになったり、精神の不調に苦しんでいた学生がここで観た映画や人とのつながりから力を得て大学へ戻れるようになったりと、このシネマクラブと映画の効用は大きいようです。

(読売新聞2022年12月20日掲載の記事から)

不登校の小中学生が増えるなか、こんなふうに学校以外に居場所や学び場をつくる動きが各地で出てきています。上で紹介した事例のように、学校外での多様な学びを中学校の「出席」として認めるようにもなってきました。

学校外に居場所と学び場を求めて

すでに退職して仕事をしていないシニア世代に向けて、よくこんなアドバイスがなされることがあります。あなたもどこかで聞いたことがありませんか?「高齢者には〈きょういく〉と〈きょうよう〉が必要だ」と。

〈きょういく〉とは、「今日、行くところ」のこと。〈きょうよう〉とは「今日、済ませる用事」のこと。

これら2つがないと、生活にメリハリがなくなり、心や頭、身体の働きがどんどん鈍っていく――そんな注意なのです。

このアドバイス、高齢者だけのものではありません。

学校へ通っていれば特に気にしなくてもよいのですが、長く不登校の状態にある生徒は〈きょういく〉と〈きょうよう〉を自覚的に探したり、つくったりしないと、知力や社会性が十分に育たないまま、大切な時期があっという間に過ぎてしまいます。

だから、いま不登校でいるあなたには自宅の外に、少しでも気分よく過ごせる場所、ささやかでも充実した体験ができる場所、誰かと話のできる場所を見つけてほしいのです。

新しく一歩を踏み出すきっかけを、小さくても着実な変化の始まりを、あせらずに、でも先延ばしせずに、つかんでください。

フリースクールで中学校「出席」扱い

談笑

そんな場所としてすぐに思い浮かぶのが、フリースクールです。行きたくない、あるいは、行きたいけれど行けない小学校・中学校に代わって〈きょういく〉と〈きょうよう〉となるのが、フリースクールではないでしょうか。

どんな教育内容かは、それぞれのフリースクールで異なりますが、定期的に通い、友だちや先生と話ができる場であることは共通しています。学習であれ、友だちとの交流であれ、どこかへの見学旅行であれ、フリースクールへ行けば何かが待っています。

不登校でも、中学校とは別の環境で学び続けることができるし、その努力を中学校側も認めてくれるようになってきています。

まだ周知が徹底していない学校現場があるかもしれませんが、文部科学省では、中学校の校長裁量でフリースクールでの学習活動を在籍校の「出席」扱いにすることを認めています。

つまり、十分な内容とレベルの学習であれば、フリースクールでの勉強が中学校の教室で授業を受けたこととしてカウントされるわけです。

中学生からでも参加できる集まりや活動

しかし、フリースクールはどの街にもあるわけではないですし、もしあったとしても教育内容や費用の面で自分には合わないかもしれません。

そんな場合、冒頭で紹介したシネマクラブのような中学生も参加できる集まりや活動を探してみてはいかがでしょうか。

そこでの交流を通じてまた別の集まりや活動を知ることもできそうです。より自分の興味関心にマッチしたものに出会える可能性が高まります。気の合った友だちに誘われて新しい世界が開けることだってあります。

身近なところに見つけてみる

走る女性

「不登校で学校へも行ってない生徒が日中、出歩くものではない」と本人も親も(そして学校も)、他人の目を気にし過ぎてはいないでしょうか。

それでは、生徒は家にいるしかありません。〈きょういく〉と〈きょうよう〉がなくなってしまいます。

学校というタガが外れると、たいていの生徒はどう過ごしていいか分からなくなります。規則正しく自宅学習を進められるほど自律していない生徒は、結局、スマートフォンやゲームに長時間、浸ることになってしまいます。そうなると、進学・進路選択に向けて心機一転することが難しくなります。

ここでもやはり、学校外に、そして自宅以外にも居場所や学びの機会を積極的に見つけることが大切です。広報誌やフリーペーパーのイベント告知欄、それにインターネットなど情報源はいろいろあります。すぐに試せそうなものとしては、たとえば――

  公園の清掃などのボランティア活動に参加してみる。
  学校の代わりに図書館へ通ってみる。
  中学生でもできるアルバイト(ご近所や親類の手伝い)をしてみる。

その他、自分の趣味や関心に応じてアンテナを広げてみてはいかがでしょう。マンガ好きだけれども絵は描けない人だって、コミケの運営の手伝いならできそうです。

やってみたけれども続かない、というのは、よくあること。何回でもトライしてみればいい、くらいに楽に構えていきましょう。たとえ1回でも何か新しいことに挑戦しておくと、次の行動を起こしやすくなります。

オープンキャンパスという刺激

単発的ではありますが、刺激を受ける場としては、オープンキャンパスや学校説明会もお薦めです。

不登校などで悶々としている気持ちの切り替えには、いま自分のいる環境(不登校、通うのが苦痛な中学校、望ましくない人間関係)とは別の環境(高校)があることを実感するのが効果的です。

中学生の進路選択に即したものは高校のオープンキャンパスですが、いま不登校の状態にある生徒には、(周囲と自分とのギャップが大きく感じられて)かえって行きづらいかもしれません。ただし、通信制高校のオープンキャンパスや学校説明会なら、まずそんな心配は無用です。在校生や参加者のなかには心やからだのピンチを経験した生徒も多くいますから、ひとりだけ場違いな思いをしなくてすみます。

中学生であれば、高校のオープンキャンパスに参加するのがふつうですが、興味関心によっては専門学校や大学のものを見に行くのも面白く、刺激のある体験となります。

専門学校であれば、学ぶ内容が具体的なので、見て分かりやすいオープンキャンパスになります。ダンス、声優、美容、ペット、調理、プログラミングなど、関心ある分野があれば、足を運んでみてください。

大学のオープンキャンパスは、高校とはもちろん、専門学校ともかなり異なります。志望校かどうかに関係なく、学生や建物などから醸し出される大学という場所の雰囲気を感じに行くだけでも得るものがありそうです。大学生活へのあこがれが不登校からの脱却につながるとまでは言えませんが、生徒本人の中に変化のきっかけをつくることになるかもしれません。

問い合わせてみれば、専門学校も大学も中学生の参加を断りはしないでしょう。むしろ歓迎するのではないでしょうか。親と一緒でもよいですし、先輩や友人の兄姉と一緒に、といった参加の仕方もあります。