通信制高校・高等専修学校ニュース
起立性調節障害と高校進学
通信制高校を詳しく知る場「新しい学校選びフェア」では、参加する生徒・保護者のために総合相談デスクを設けています。総合相談デスクを訪れる人のなかには、起立性調節障害(OD)のために不登校が続くという中学生と保護者が少なくありません。ODについては以前の記事でも触れましたが、いくつか新しい情報を加えて今回また話題にします。
日本小児心身医学会では、軽症例を含めると小学生の約5%、中学生の約10%にODがあり、うち約1%が重症だと見ています。また不登校の児童生徒の約3~4割にODがあると考えます。
同学会によると、日常生活に支障のないODの軽症例では、適切な治療によって2~3ヶ月で症状が改善します。しかし、学校を長期欠席するような重症例では回復に2~3年以上を要するそうです。
通信制高校なら前向きになれる
不登校が長期化する重い起立性調節障害(OD)の生徒は、通信制高校を進路の選択肢に含めておくと先行きを悲観しないで済みます。
自分の体調に応じた学び方や学ぶペースをかなり柔軟に設定できるのが、(私立)通信制の強みです。
たとえばODの症状がつらい午前中は安静にして、昼過ぎや夕方に学習のコアタイム(最も活動的な時間帯)をもってくることができます。
また、たとえばODで体調が不安の1年次は自宅学習中心の「通信型」を選び、症状が改善してきた2年次以降は登校して学ぶ「通学型」へ移るなど、コース変更も可能です。
学校によってコースの設定や変更のしかたが異なるので、自分に適したものを探すつもりで通信制高校の学校案内資料を取り寄せ、見くらべてみてください。
全日制高校であればどうしても「ODだからダメ、無理」という、あきらめモードになりがちですが、通信制高校であれば「ODでもできる、やれる」という前向きモードになれそうです。
脳脊髄液減少症の可能性も
起立性調節障害(OD)だという中学生の保護者から、しばしば「薬を出してもらっているが、あまり症状が改善されない」という不満や心配の声を聞くことがあります。
「あせらず気長に治していきましょう」と医師に言われても、治療の効果がなかなか出ないので不安なODの中学生も多いのではないでしょうか。
そんな場合、ODではなく、脳脊髄液減少症の可能性を疑ってみる必要があるかもしれません。
脳脊髄液減少症は、脳や脊髄を包む硬膜が裂けて中の脳脊髄液(髄液)が漏れて起こるとされます。患者本人の血液を患部に注入する治療法「ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入療法)」で回復が図れます。
ODと脳脊髄液減少症は、頭痛や立ちくらみなど、似たような症状を呈するので、間違われやすいのです。
しかし、ODの多くのケースでは午後には症状が収まるのに対して、脳脊髄液減少症では夜まで頭痛が続くことがよくあります。また、横になると症状が和らぐという特徴もあるようです。
山王病院(東京都港区)脳神経外科の高橋浩一医師がまとめた論文によると、2019年1月~2021年5月に診断された20歳未満の脳脊髄液減少症患者67人のうち28人が、以前に起立性調節障害などと診断されていました。(読売新聞2022年11月22日記事より)
小児科医や内科医が、身体の具合が悪くて朝起きられない中学生=起立性調節障害と短絡し、問診だけで判断している場合も否定しきれません。
見当違いの治療で、せっかくの若い、伸び盛りの時期をふいにしてしまっては残念です。もし今の治療の効果に疑問があるのなら、脳神経科などで改めて詳しく診てもらってはいかがでしょうか。