通信制高校からの大学進学・受験対策

通信制高校の進路指導

三者面談の様子

これまで、通信制高校は「高校卒業資格」を得ることを第一の目的として、その役割を担ってきました。しかし、現在は、中学校卒業後、すぐに通信制高校に入学するケースが増加しています。在籍生徒の若年化にともない、通信制高校卒業後に大学・専門学校進学を希望する生徒がどんどん増えています。

このような状況の中、生徒の進学ニーズにきめ細やかに対応した通信制高校も現れてきました。今や、通信制高校での進路指導は、全日制高校と同等の指導になってきていると言えるでしょう。

通信制高校の進路指導の現状

週5日登校するコースは別にして、週1・2日程度の登校スタイルである通信制高校の場合、全日制高校と同様の全体指導をメインとした進路指導をおこなうことは困難だと考えられていました。

したがって、これまでの通信制高校では、生徒一人ひとりの学力や進路希望を把握し、的確な進路指導をおこなうために、週1~2日あるいは月に数日程度の限られた登校日の中で、生徒との対話を中心とした指導をおこなうことが一般的でした。

ですが、進学ニーズの高まりにともない、近年ではさまざまな進路指導・キャリア教育が展開されているようです。ある通信制課程の進路指導の事例を見てみましょう。

「進路だよりの発行」、「進路講演会」、「進学説明会・就職説明会」そして「個別進路面談」など、多岐にわたる指導がなされていることがおわかりいただけるかと思います。特に、実際の職業人や業界のプロを招いての講演会や、大学や専門学校の講師に来校してもらい学校説明を行うなど、まさに全日制高校の進路指導で中心に据えられている内容が通信制高校でも同様に展開されているのです。

また、別の通信制高校では「卒業生による進学・就職体験発表」を実施しています。全日制高校と比べクラス単位での行事が少ないため、学校とのつながりが薄くなりがちですが、卒業生が後輩のために体験談を伝えることで、話を聞いた生徒たちは学校への愛着が湧きその後の進路活動にも積極的に参加するようになったとのこと。

さらに、経済的に困窮する家庭においては、進学への費用を捻出できない場合もあるでしょう。そういった生徒に向け、奨学金などの説明会を開いている高校もあります。

通信制高校の進路指導の基本は手厚い「マンツーマン」対応

昨今の通信制高校では個別指導のみならず全日制高校と同様の進路行事や活動が行われていることをお話ししてきましたが、とはいえ、なんといっても通信制高校の強みである「マンツーマン指導」や「少人数制」は、進路指導の場面でも大きなメリットとなっています。

通信制高校の進路指導では、全日制高校と比較して個別の進路相談の面談実施回数が多く、生徒の求める具体的情報提供を密におこなっています。それでも、学校を休みがちな生徒や授業が終わるとすぐに帰宅してしまう生徒など、情報提供の機会を得られない生徒もいます。そのような生徒へは自宅への連絡や郵便、eメールでの相談指導をおこない、その後、個別の希望進路先を確認し、教員との面談を促すことによって進路実現に向けての具体的方法を提供します。

こういった、きめ細やかな個別指導・マンツーマン対応が自身の将来を考える必要性に気づかせ、通信制高校の進学率向上につながっているのでしょう。

通信制高校の進路指導上の弱点

一方、全日制高校と比べ、通信制高校での進路指導の弱点は、生徒に直接指導できる時間に制約があることです。

例えば、スクーリングのために週に1日しか生徒が登校しないようなケースでは、「今日会えなければ明日伝えよう」といったことはできません。

通信制高校では、このようなデメリットを補うべく、情報伝達の手段として「メール配信」や「SNSの活用」、「オンライン指導」が全日制高校以上に進んでいます

大学進学・専門学校進学を目指す

オンライン講義

1章では、通信制高校の進路指導の全体像と全日制高校と同様の指導が行われていることについて述べました。ここからは、特に大学・専門学校への「進学」に着目し、通信制高校の進学サポートについてお伝えしていきます。

通信制高校から大学・専門学校進学を目指せるのか

まずはじめにお伝えしたいことは、通信制高校出身だからといって、大学・専門学校受験において不利になることは一切ない、ということです。まれに、「通信制高校出身だから、受験で不利になってしまわないか心配です」とおっしゃる方がいます。そのような心配は無用であることを知っておいてください。

さて、通信制高校卒業時に得ることができる「高校卒業資格」は、全日制高校や定時制高校を卒業して得られる資格と全く同じ「高校卒業資格」です。共通テストや一般的な大学入試の合否は当日の試験の点数で判定されることがほとんどですので、通信制高校であることが一般入試において合否に影響することはありません。

また、学校推薦型選抜(指定校)の枠は学校により差があるものの、総合型選抜(旧:AO入試)や学校推薦型選抜(公募制)での受験は、全日制高校出身者と同じ条件で選抜されますので、出身高校における有利不利はありません。このように、大学・専門学校受験資格の上で通信制高校出身者が不利になることは何もありません

では、不利になることは本当にないの?

不利、ということではありませんが、通信制高校だからこその準備をしておく必要はあります。

例えば、近年の入試の主流となっている総合型選抜(旧:AO入試)や学校推薦型選抜(自己推薦等)では、面接試験があります。その際、面接官から「通信制高校に通われていますが、どうして通信制を選んだのですか?」というような質問が出るかもしれません。

準備していないと、一瞬焦るかもしれません。「なぜ、こんなことを聞くんだろう?」と躊躇していてはダメです。

この場合、通信制高校出身であることを理由に面接試験で不合格になることはありません。

万が一不合格であった場合、その理由は面接そのものが合格基準に達していなかったからなのです。急に質問されると答えづらいと思いますので、先生に相談をして、「通信制高校出身者」ならではの質問項目を想定しておけば万全です。

通信制高校が大学・専門学校進学に有利な点

通信制高校は、毎日同じ時間に登校し多くの時間を学校で過ごさなければならない全日制高校や定時制高校と比べて、自分の時間が多く取れるというメリットがあります。すなわち、自分のペースで勉強をすることができることが大きな利点です。

もっといえば、希望の大学入試に必要な教科や得意科目などを重点的に勉強することが可能なのです。全日制高校ではその特性から、入試で必要のない教科の授業も出席しなければなりません。自分のライフスタイルに合わせて全日制高校よりも受験に専念することが可能です。

また、通信制高校にも「指定校推薦枠」があります。高校によって人数枠に差がありますが、指定校推薦枠があれば進学を有利に進めることができます。一概には言えませんが、全日制高校よりも通信制高校の方が指定校推薦枠の高校内での競争が少ないこともあるため、そういった点でも有利かもしれません。

大学進学に向けた入試対応特化型コースを選ぶ

ここ数年、大学進学に特化したコースを設ける通信制高校が増えています。こういった大学進学コースを設定する高校では、通信制である利点を最大限に活かし効率的に大学受験への準備を進めることができます。また、全日制高校の生徒が予備校に通うことと比較し、通信制高校の大学進学コースを選ぶことで、予備校費用が必要なくなり経済的なメリットも出てくるでしょう。以下に大学進学コースのある通信制高校・サポート校の例をご紹介します。

興学舎高等学院 特進科(千葉県松戸市)

ポイント:午前中は興学社高等学院で、午後は東進衛星予備校で授業を受けることが可能です。

中央高等学院 大学入試コース(東京都/神奈川県/千葉県/埼玉県/愛知県)

ポイント:長期休暇中の集中講習や、目的別講座、模擬試験など、長年のノウハウがつまった万全の受験指導が整っています。
▷吉祥寺・池袋・渋谷原宿・横浜・千葉・さいたま、各校の学校情報はこちら ▷名古屋校の学校情報はこちら

ゴールフリー高等学院 大学進学コース(京都府京都市/滋賀県草津市)

ポイント:生徒は全員が進学希望者。予備校の実力派講師陣による授業≪ベリタスアカデミー映像授業≫と難関大学受験対策授業プログラムで大学合格を目指します。
京都校の学校情報はこちら 草津校の学校情報はこちら

神村学園高等部[京都] 大学進学コース(京都府京都市)

ポイント:センター対策・一般受験対策では、基本科目となる「英語」を徹底的に取り組みます。

神村学園高等部[大阪梅田] 進学コース(大阪府大阪市)

ポイント:現役大学生が人生路相談はもちろんのこと、その他大学生活などにも相談に乗ってくれます。

YMCA学院高等学校 進学コース大阪府大阪市)

ポイント:受験に向けた授業以外に、進路研究や進路に関しての懇談などを実施しています。

総合型選抜(旧:AO入試)・学校推薦型選抜対策も万全

近年、実施校が大幅に増えている総合型選抜(旧:AO入試)・学校推薦型選抜等に対応するため、大学・専門学校進学希望者には「小論文」指導や「面接」指導を実施している学校がほとんどです。特に面接指導には力を入れている学校が多く、当日の服装について、入退室や挨拶などの礼法指導、想定問答など、入試合格に向けた徹底指導が行われているようです。

系列大学・専門学校へ進学する際の特典も

通信制高校のなかには、系列の大学や専門学校が設置されている学校があります。その際、入学にあたって何らかの特典がある事例もあります。

酪農学園大学への優先入学

農業、酪農、畜産の総合大学である「酪農学園大学」。本学では生命環境や食品開発など最先端サイエンスを学ぶことができ、さらに、獣医師や管理栄養士の国家資格取得を目指す専攻も設置されています。さて、「とわの森三愛高等学校 通信制課程」から酪農学園大学へ進学する場合、「入学金全額免除」、「内部推薦進学における選考考慮」といった附属校特典があります。また、入学前には国・数・英の事前学習指導もおこなってくれるそうです。


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専門学校、東京未来大学、小田原短期大学への優先入学

飛鳥未来高等学校飛鳥未来きずな高等学校は日本屈指の学校法人三幸学園グループ。

姉妹校の専門学校(医療・福祉・看護系、スポーツ系、美容系、ブライダル系、観光系、保育系、調理製菓・カフェ系)や、こども心理を学ぶ『東京未来大学』、栄養士・保育士を目指す『小田原短期大学』へ優先的に進学できます。

また、姉妹校の専門学校に進学した場合、選考料2万円+授業料10万円の計12万円が免除になる制度もあります。

通信制高校の進路実績(進学・就職)

それでは、通信制高校から大学・専門学校へ進学した人の割合はどの程度か確認しておきましょう。統計データから読み取っていきます。

卒業生の進学・就職割合

文部科学省の令和元年度学校基本調査をみると、平成30年度間の高等学校通信制課程の卒業者数は56,283人で、前年度間より2,733人増加していることがわかります。

卒業者を状況別にみると次の通りです。

大学等進学者10,104人
専修学校(専門課程)進学者12,212人
専修学校(一般課程)等入学者961人
公共職業能力開発施設等入学者426人
就職者11,026人
上記以外の者21,070人
不詳・死亡の者484人
令和元年度学校基本調査

上記より、大学等への進学率は18.0%、専門学校(専修学校専門課程)への進学率は21.7%、大学・専門学校を合わせると通信制高校の卒業者のおおよそ4割が進学、そして、約2割が就職していることがわかります。

公立・私立通信制高校の進路先の違い

上に挙げた統計データは、公立と私立の通信制高校を合わせた数字です。次に公立と私立の通信制高校ではそれぞれどうなっているか見ておきましょう。

設置者別公立私立通信制課程
総計
卒業者数7,98248,30156,283
大学等進学者8939,21110,104
割合11.2%19.1%18.0%
専修学校
(専門課程)進学者
93611,27612,212
割合11.7%23.3%21.7%
就職者1,7459,28111,026
割合21.9%19.2%19.6%
上記以外の者4,09116,97921,070
割合51.3%35.2%37.4%

※文部科学省の学校基本調査(令和元年度)より、弊社編集部表作成

全体では18%が大学進学とお伝えしましたが、上記表のとおり、公立通信制高校では11.2%しか大学進学していないことがわかります。

専門学校進学も大学とほぼ同じ割合11.7%の進学率です。一方、私立の通信制高校は、大学進学が19.1%、専門学校進学が23.3%と、公立の通信制高校よりも進学率が高くなっています。

さらに、注目すべき点は「進路未決定者」の違いです。公立通信制高校では、卒業者の半数以上(51.3%)が進路未決定のまま卒業している、という厳しい現実があります。

通信制高校は通学スタイルの特性上、病気や障がいを持つ方などスムーズな進路決定とならないケースもあるため、全日制高校と比較することは意味がありませんが、それでも、全体では約4割が進学し、約2割が就職をかなえています。

ちなみに、平成4年の大学進学率は6.5%、平成14年は12.1%、平成24年は16.7%でした。通信制高校の卒業生が大学進学する割合は着実に増えていることがおわかりいただけると思います。生徒の希望進路を実現するため、高校側のバックアップ体制が整ってきていることが理由の一つです。

通信制高校・サポート校・高等専修学校の基礎知識
目次(各記事にリンクしています)

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