通信制高校からの就職

通信制高校の就職指導

就職指導

文部科学省の令和元年度(2019年度)学校基本調査によると、平成30年度の間に通信制高校を卒業した者のうち、卒業してすぐに就職した者の割合は19.6%です。おおよそ5人に1人が就職しています。この割合は、全日制課程の卒業生とさほど変わりません。ちなみに、「通信制高校からの進学」でお伝えしましたが、大学・専門学校への進学率は約40%ですので、卒業と同時に進路決定した者の割合はだいたい60%ということになります。

さて、ここからは、通信制高校卒業後の就職事情を見ていきましょう。

通信制高校からの就職は不利なのか

自宅学習を基本とし、スクーリングや単位認定試験などの厳しい評価を受けてはじめて単位修得でき、高校卒業となるのが通信制高校。全日制高校は、きちんと毎日通って定期テストを受けてさえいれば、ほぼ全ての生徒は高校を卒業します。つまり、通信制高校を卒業できるということは、自己管理がきちんとできる人材であり、計画的に物事を進められる人材、そして努力家でもあるといえるのです。本来であれば、全日制高校の生徒よりも評価され、はるかに職業社会(就職)にマッチしているのです。

ですが、残念ながら通信制高校の卒業生に対して企業の面接官の中に「偏見」を持つ人が少なからずいます。その点が通信制高校からの就職に不利な部分といえるでしょうか。能力があり、努力家でもある通信制高校卒業生の就職が不利にならないよう、以下のことを知っておいてください。

通信制高校からの就職を有利にするために

まず、高校から就職(高卒就職)する流れについて簡単にお伝えします。

就職年次(おもに高校3年生)の7月にハローワークを経由して求人票が解禁となります。そして、9月中旬より全国一斉に高校生の就職活動がスタートします。この9月の就職活動開始に向け、どの通信制高校においても、履歴書・志望理由書の書き方講座、面接の練習、(制服のない学校では)リクルートスーツなどの服装アドバイスまで徹底的に指導がおこなわれます。

先ほど通信制高校の卒業生に対し「偏見」を持つ企業担当者がいることをお伝えしました。就職に向けた準備の中で、その偏見を払しょくするために高校時代をどのように過ごしていくべきか、以下を参考にしてください。

勉強風景

授業にのぞむ姿勢

簡単にいうと、遅刻・欠席をしない、ということです。通信制課程ですので、登校日数にばらつきがありますが、いずれにせよ遅刻・欠席をしないよう心がけましょう。特に、遅刻は少し気をつければ避けられるもの。『10分早く家を出よう』、そういった心がけひとつで遅刻はしなくて済みます。高校生から遅刻癖がついていたら、将来就職し社会人になっても遅刻するのではないか、企業の担当者はそのように見ています。

また、成績をできるだけ上げておきたいものです。もちろん、「成績が悪い=不採用」はほとんどありません。しかし、高校内で選考を行う場合は、成績上位者が企業へ推薦されることになるからです。

インターンシップの活用

インターンシップとは、高校在学中に会社で模擬就労させてもらう企業研修制度のことです。この制度は高校生と企業の双方にメリットがあるもので、生徒にとってはこの会社で働きたいと思えるか、企業にとってはこの生徒に内定を出したいと思えるか、それぞれがじっくり判断できることがその理由です。実はこのインターンシップを通じて採用につながることが多くあります。通信制高校というだけで「高校を辞めたように、会社も辞めるのではないか」といった偏見を自分のがんばりで払いのけることができる制度とも言えるでしょう。

また、学校の先生や両親以外の「働く大人」と話ができる貴重な機会であることもメリットのひとつです。ぜひ、高校生のうちにインターンシップへ参加してみましょう。

アルバイトをやっておく

通信制高校の最大のメリットである「時間を有効活用できる」点を活かし、アルバイトをするのがオススメです。アルバイトは社会性を身につける一番の方法です。社会人としてのマナーやルール、就職後、社会人として役に立つスキルを得ることにつながります。アルバイトをしながらしっかり勉強もし、高校卒業資格を得たというあなたのがんばりは、就職面接の場面で大きなアピール材料になります。面接の際、「どんなアルバイトをしたか」「アルバイトで身につけたことは」「アルバイトでの失敗談」などを聞かれ、どれもプラス評価につながります。

資格を取得する

全日制(普通科)高校にはあまりない特徴のひとつに、国家資格が取得できる通信制高校(高等専修学校)を選べる、という点があります。例えば、「調理師」や「美容師」の国家資格がそれにあたります。これらの資格は、一般的には高校を卒業後、専門学校へ進学してはじめて取得することができますが、これら専門コースを設置する通信制高校(高等専修学校)では高校で資格取得できるため、他の高校生より3年も早く社会人として活躍できます。国家資格を必要とする仕事ですので、資格保有者は就職に有利なのは言うまでもありません。

これら以外でも、就職活動をより有利にすすめるため、漢字検定、英語検定、簿記検定、秘書検定、ビジネス能力検定、ITパスポート試験といった資格取得を目指しましょう。通信制高校によっては資格取得のための特別講座を行っているところがあります。

また、国家資格ではありませんが、WordやExcel、PowerPointなどの利用スキルを証明してくれる資格に『マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)』があります。IT社会ではこういったITツールの利活用ができるかどうかで企業の評価は一気に変わることがあります。ぜひ、忘れないで取り組んでください。

面接、履歴書、志望動機書、自己PR対策

就職活動をする場合、面接は避けては通れません。在籍高校の先生にお願いして面接練習を何度も行いましょう。あわせて、履歴書や志望動機書、自己PR文も添削してもらうことが大切です。

通信制高校の生徒への就職面接では、面接官が通信制高校のことをあまり良く知らない、ということがあります。ですので、「通信制高校ってどんな高校?」というような質問をされることが多いです。さらに、「どうして通信制高校に入学・転編入したのか?」という質問も定番ですので、しっかり答えられるように準備しましょう。そのためには「自己分析」が重要です。入学当時を思い出し、なぜ通信制高校に入学したか、理由を振り返っておきましょう。

通信制高校も全日制高校と同様の就職指導が行われている

これまで、通信制高校の生徒が就職面接を有利に進めるために、どのように過ごしたらよいかお伝えしてきました。「面接練習」「履歴書の書き方指導」「インターンシップへの参加」「自己分析の方法」「資格取得対策」、実はいずれも通信制高校で進路指導の一環として通常行われていることです。そして、全日制高校でも同様に行われています。すなわち、通信制高校も全日制高校と同様の就職指導・就職サポートが行われている、ということです。

高校卒業後、就職を目指すのであればまずは高校の就職指導スケジュールに則って先生の指示に従うことが何より成功の近道といえるでしょう。

通信制課程の「高校卒業資格」だからといって就職の有利・不利はない

さて、高校卒業資格について、これは全日制であろうと、定時制であろうと、通信制であろうと「高校卒業資格」に変わりはなく、どれが良いとか悪いといった優劣は一切ありません。よって、高校のどの課程を卒業しても就職で有利・不利はありません

しかし、学校の「通い方」の違いを利用し、先ほど申し上げたアルバイト経験を積む、国家資格を取得できる学校を選ぶ、といった方法を使うことで全日制高校の生徒よりも就職に有利な状況を生み出すことは可能なのです。

フリーターにならないように

昨今では、通信制高校卒業後の進路として大学・専門学校進学を選ぶ人が増えてきたものの、就職する人も一定数います。ここで、就職を目指す人たちには「フリーター」にならないように、強くお伝えしたいと思います。通信制高校を卒業し、正社員として就職してもすぐに辞めてしまう人が多くいます。残念なことに、早期離職した人たちはその後、正社員ではなくフリーターになってしまう割合が高いようです。通信制高校をがんばって卒業してもフリーターになってしまっては、せっかくの努力が水の泡です。

就職しても長く働き続けることに不安を感じる方、自信がない方は、どのように考えるべきでしょうか。そういった方は、就職ではなく「進学」を考えてみるのも一つです。大学や専門学校へ進学し、資格や技術、そして高校よりもうひとつ上の「学歴」を得ることで就職活動の幅を広げることが可能です。さらに、高卒就職と大卒就職では給料にも大きな差があります。

高卒就職を否定するものではありませんが、高校を卒業してすぐに働けるか、もう少し時間を置いた方が良いのか(進学すべきか)、じっくり考えてみてください。

通信制高校の就職実績

通信制高校の就職実績はどうなっているでしょうか。学校基本調査令和元年度(2019年度)の統計をもう一度見てみましょう。通信制高校を卒業し、就職した人の割合は19.6%です。公立私立通信制高校で比較すると、公立の就職割合は全卒業生の21.9%、私立は19.2%でそれほど差はありません。

高校生の就職率をみる

上記の数字は、全卒業生のうち就職した割合、という単なるデータに過ぎず、就職率ではありません。知りたいことは、「就職希望者のうち就職内定した人の割合=就職内定率」です。ちなみに、全日制課程+定時制課程の就職内定率は98.2%(平成31年3月高等学校卒業者の就職状況、文部科学省発表)という非常に高い数字です。就職を希望すれば、ほとんどが就職できると考えてよいでしょう。

一方、通信制高校の就職内定率は統計データがありません。通信制高校の卒業生の就職内定率については、高校によってまちまちです。ただし、通信制高校卒業後、進学も就職もしなかった人(進路未決定者)が 全体の37.4%(公立通信制高校では51.3%、私立通信制高校では35.2%)いるという統計を見ると、最初から就職を希望していない層が少なからずいることが予想できます。

通信制高校、各校の就職実績は相談会などで直接聞いてみよう

各通信制高校の就職実績は、個々に調べるしか方法がありません。就職内定率はどうか、実際に内定している企業はどんなところか、まずは資料請求をして学校のパンフレットで就職実績について確認しましょう。

オススメは、多くの通信制高校やサポート校、高等専修学校が一堂に集まる「進学相談会」に参加することです。この会場に行けば、資料をたくさん持ち帰ることができますし、気になる学校については、担当者(相談員)に直接質問することも可能です。

就職に強い通信制高校

通信制高校を探す際「就職に強い学校を選びたい」、そのように考える方は以下のポイントを押さえておきましょう。

一つは、就職指導の内容を深く確認することです。面接・履歴書指導をきちんと行っているか、就職ガイダンスがスケジュール化されているか、もちろん就職実績(就職率)も。これらの内容をまずはパンフレットで。その後、進学相談会、学校見学会などで事前に確認しておきましょう。

もう一点が、就職に関連するコースを開設している学校を選ぶことです。通信制高校の中には、就職を目指すことを念頭に置いたコースを設置しているところがあります。そのような就職コースでは、履歴書に記載ができる資格取得のサポートも行っており、高校卒業後は「就職」と考えている場合は、このようなコースに入学すると安心でしょう。

通信制高校・サポート校・高等専修学校の基礎知識
目次(各記事にリンクしています)

通信制高校とは

通信制高校の学費

通信制高校への転編入

通信制高校からの就職・進学

1.通信制高校からの大学進学・受験対策
2.通信制高校からの就職【現在のページ】

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