高等専修学校(専修学校高等課程)とは?

「高等専修学校」や「専修学校高等課程」はご存知でしょうか?

このページにたどり着いた皆さんにとっては、「中学校を卒業した」生徒が入学する教育機関であることはすでにご理解いただいているかもしれません。それでも、中学卒業後の進学先は全日制高校が一般的で、せいぜい通信制高校までは知っている、という方が多いでしょう。

「高校なの?」「専門学校なの?」そんな声も聞かれる高等専修学校(専修学校高等課程)について、正しい知識を持っていただき、中学校卒業後の進路のひとつに加えていただきたいと思います。

ここでは「高等専修学校」が、どんな学校なのかを解説していきますが、まずは「どんな人に向いているか」お伝えします。

「なりたい職業が決まっている」
「手に職をつけて早く働きたい」
「なるべく早く資格を取りたい」
「興味ある分野を深く学んでみたい」
「ふつうの高校ではなんだか面白くない」
「不登校経験者だけれど、学ぶ意欲を取り戻したい」

いかがでしょうか。ひとつでも該当する人にはぜひ、一度は検討してもらいたい進路です。

そもそも、専修学校って何?

専修学校とは、1976年(昭和51年)に新しい学校制度として創設された、将来の仕事に役立つ知識や技術と、社会に出てから必要な教養を身に付けることができる教育機関です。学校教育法第124条に「職業若しくは実際生活に必要な能力を育成し、又は教養の向上を図ること」と記されています。

専修学校は、入学資格の違いによって【高等課程】・【専門課程】・【一般課程】の3つに分かれます。多くの方に聞き馴染みがあるのは「専門学校」でしょう。これは、専修学校の中の「専門課程」のことで、入学資格は高校を卒業した者もしくは高校卒業程度の者となります。専修学校3課程のうち、在籍者数の8割を占めているのがこの専門課程(専門学校)です。

一方、高等課程とは、中学校卒業者を対象にしている「高等専修学校(専修学校高等課程)」のことを言います。学校によっては、高等課程と専門課程の2つの課程を併置していることから、専門課程と入学者を区別するために「○○専門学校高等課程」と呼んでいるところもあります。高等専修学校は専修学校高等課程の単独設置校の校名標記で、呼び方が違うだけで入学対象は同様です。なお、一般課程は特に入学資格は問われません。

[まとめ]
 ・専修学校は、職業に直結した専門的な知識と技術を身につけるための教育機関です。
 ・法律(=学校教育法)により定められた正規の学校です。
 ・入学資格の違いにより、高等課程・専門課程・一般課程に分かれています。

 課程対象名称
専修
学校
高等
課程
中学校卒業以上

○○高等専修学校/
○○専門学校高等課程(※)

専門
課程
高校卒業以上
○○専門学校/
専門学校○○

一般
課程
学歴・年齢等不問
さまざまな名称

※高等課程と専門課程を併せてもっている学校の場合、○○高等専修学校ではなく、○○専門学校高等課程という名称が多く用いられています。

高等専修学校(専修学校高等課程)とは?

高等専修学校(専修学校高等課程)の入学資格が中学校卒業者を対象としていることは前述のとおりです。ここでは、高等専修学校とはどんな学校なのか、もう少し詳しく見ていきます。

高等課程を設置する専修学校を高等専修学校と呼び、高等専修学校は、現在は高校とならぶ中等教育機関として位置づけられています。ですが、修業年限や学べる分野など、高校と異なる点がいくつかあります。しっかり把握しておきましょう。高等専修学校(専修学校高等課程)概要

高等専修学校(専修学校高等課程)概要

・【教育の特徴】実務面にウエイトをおいた職業教育が中心、座学より実習が多い
・【修業年限】多くは3年、ただし学科・コースによって1年制から3年制まで様々ある
・【学べる分野】「工業」「農業」「医療」「衛生」「教育・社会福祉」「商業実務」「服飾・家政」「文化・教養」の全8分野

このように、広く一般的な教養や見識として普通科目を学習する全日制普通科高校に対し、高等専修学校では仕事に役立つ実践的な職業訓練・技術を習得できるのが大きな特徴で、高校とならぶ中学校卒業後の進路の一つとなっています。

入試と学校生活

高等専修学校の入学試験は、学校によって異なります。学科試験や作文・面接の有無、書類選考のみで入学しやすいといった学校も多くあります。入試に合格すると4月から授業が始まり、毎日登校して学校生活を送ります。文化祭や体育祭、修学旅行といった学校行事や定期考査などがあり、クラブ活動が盛んな学校もあります。学校生活については、全日制高校とそう大きな変わりはないと言えるでしょう。

高等専修学校の役割とは?

いまや高等専修学校は、全日制高校とは一線を画す、中卒者を受け入れる進路先として注目されています。なりたい職業が決まっており、その分野を早くから勉強したいと望む生徒、不登校や引きこもりなどの問題を抱える生徒、さらには中学校卒業してすぐの生徒のみならず、高校中退者の再入学の受け入れ機関としてなど、高等専修学校が担う役割はますます大きくなっています。

全国にどのくらいの数がある?学んでいる生徒数は?

文部科学省の2022年度(令和4年度)版「学校基本調査」によると、高等専修学校(専修学校高等課程)の数は396校(国立1、公立6、私立389)、生徒数は33,634人となっています。

また、令和2年度版「専修学校各種学校調査統計資料」より、分野別在籍者数をみると、生徒数が最も多いのは「医療分野」で8,516人、次が「商業実務分野」8,145人、以下「衛生分野」4,819人、「工業分野」4,634人と続きます。こうしてみると、高等専修学校のおおよそ半数が「医療分野」と「商業実務分野」を学ぶ生徒であることがわかります。

 ●高等専修学校の生徒数(分野別)

2020年
工業4,634
農業74
医療8,516
衛生4,819
教育・社会福祉1,008
商業実務8,145
服飾・家政2,281
文化・教養4,598
34,075
※引用:令和2年度専修学校各種学校調査統計資料(公益社団法人東京都専修学校各種学校協会)

どんなことが学べるの?

高等専修学校では、専門的な知識・技術を身に付けるため、座学よりも実習・実務に関する授業の割合が多くなります。また、めざす業界で即戦力として活躍することを目的として、多岐にわたる資格取得、検定試験合格も目指します。下記に分野別に学べる内容・目指す就職先をまとめました。

●どんなことを学べるか・どんな仕事を目指せるか(分野別)

 学べること、めざす業界
工業自動車整備、電気工事、ガス溶接技能、アーク溶接技能、建築土木関連、情報処理
農業農業従事者
医療准看護師
衛生理容師、美容師、調理師、製菓、製パン
教育・社会福祉ホームヘルパー、介護福祉士、特別養護老人ホームなどの福祉施設、病院
商業実務一般企業事務職、営業職
服飾・家政ファッション販売、アパレルメーカー
文化・教養芸能プロダクション、音楽事務所、ダンススタジオ

高校中退者や全日制や通信制からの転入学・編入学を受け入れてくれる?

高等専修学校は、法律上、高校と同等の教育機関であると位置づけられていますが、不登校経験者、高校中退者、転入・編入生の受け入れにも積極的です。

学校を転・編入学するにあたり心配な点があるとしても、様々な支援体制があるので安心でしょう。多くの学校では教育的支援を必要とする生徒に対するサポート体制が整えられており、例えば、スクールカウンセラーなどの専門スタッフが定期的に来校して相談に応じているケースなど、支援の内容は多岐にわたります。

これまでにどこかでつまずいた経験があっても、普通科高校とは異なり、特定の専門分野に興味や関心を持っていたり、将来やりたいことがはっきりしている人には向いている学校と言えるでしょう。

※すべての高等専修学校が転・編入学制度を設けているわけではありません。事前に各学校にご確認ください。

「高卒資格」「大学受験資格」「国家資格」の取得は可能なの?

高等専修学校だけを卒業しても高校卒業資格は得られません。
それでは、高校卒業資格が欲しい、大学進学したい、国家資格を取得したい、そのような場合、高等専修学校は不利となるでしょうか。

答えは『No』です。けっしてそのようなことはありません。

以下に詳しく説明します。

技能連携校制度(高校卒業資格を同時に取得)

高等専修学校の中には、通信制高校とあわせて入学する学校があります。

高校の勉強も一緒におこなうことで、高等専修学校卒業と同時に「高校卒業資格」を取得できます。このような高校と連携した高等専修学校を「技能連携校」といいます。

技能連携校のメリットは、高等専修学校で学習した教科の最大半分までを高校の単位とみなすことができる、という点です。

2校に同時在籍するため学習量もその分増えてしまうように思われがちですが、実際にはそんなことはなく、無理や無駄なく高校卒業という学歴を得ることができます。

専門技術を身につけ、さらに高校卒業資格も得られるこの「技能連携校」制度を活用することで、特定の技術や知識を持ったうえで大学進学するなど、卒業後の選択肢が大きく広がります

大学入学資格付与指定校

技能連携校制度だと2校同時在籍するので少し大変そう・・、とはいえ卒業後は大学進学も考えたい、という場合は、大学入学資格付与校の高等専修学校を選ぶ、という方法もあります。

大学入学資格付与指定校とは、修業年限3年以上で総授業時間数2,590時間以上(うち普通科目420時間以上)の要件を満たし、文部科学大臣が指定した学科を卒業した場合、卒業と同時に「大学入学資格」を得ることができ、大学・短大への進学も可能となる制度です。

これは、高校卒業資格ではないものの大学入学資格は得られるので、大学・短大進学などの選択肢を持つことができます。

国家資格取得

入学する学科・コースによっては、高等専修学校卒業と同時に国家資格(調理師)が得られたり、国家試験受験資格(自動車整備士、准看護師、美容師、理容師、製菓衛生師)を得ることができます。

また、第二種電気工事士や電気通信設備工事担任者試験のAI(アナログ回線及びISDN回線)第3種、DD(デジタルデータ回線)第3種は、卒業によって試験の一部が免除されます。

職業直結の資格検定に向けた授業が充実しているのも、高等専修学校のメリットです。

「高等学校等就学支援金」や「学割」の対象校?

経済的な支援制度も高校と変わりありません。

高等専修学校は高校と同等の扱いとなっており、学校教育法に定められている正規の教育機関であるため、国の制度である高等学校等就学支援金制度が適用となります。

また、各都道府県で給付金を支給している場合は補助を受けられる場合があります。

もちろん、通学定期券などの学割や奨学金制度も全日制や通信制の高校生と同様に利用できますし、多くの公共施設を学生割引料金で利用することができます。

まとめ
~高等専修学校(専修学校高等課程)のメリット・デメリット~

全日制、通信制など、どの種別の学校に入学してもメリット・デメリットは必ず存在します。もちろん、高等専修学校も例外ではありません。

高等専修学校のメリット

【興味ある分野を深く学んでみたい人】

高等専修学校は専門的な内容を早期から学ぶことができるのが最大のメリットです。普通科高校で机に向かって毎日勉強し続けることに自信が無くても、実技科目が多いことから学習意欲を維持できる学校といえます。

【なりたい職業が決まっている人】

美容師や調理師、芸能(声優・音楽)など、学ぶ内容が職業に直結しています。そのため、就職した直後から学んできた内容を活かし活躍することができます。

高等専修学校のデメリット

【興味や関心が変わった場合】

専門的な内容を学ぶ学校であることから、興味や関心を無くしてしまうと学習意欲が低下するかもしれません。
しかし、そのようなケースを回避できる方法があります。技能連携制度を活用することで高校卒業資格を得ることができるため、高校卒業を目標に気持ちを切り替えることが可能です。

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