通信制高校・高等専修学校ニュース

親子300組への取材で分かった「通信制高校が向いている生徒6タイプ」

新しい学校選びの基準 ニュースクからのアドバイス

当サイト〈ニュースク〉を企画編集する〈高校生進学支援の会〉では、通信制高校に関心のある中学生・高校生と保護者を対象に、進路相談会を数多く実施してきました。その際にじかに声を聞かせてもらった親子は、300組以上にのぼります。相談会での面談や通信制高校への取材から分かるのは、全日制よりも通信制が適している生徒には6つのタイプがあることです。あなたは、どのタイプに当てはまりますか?

タイプ1 不登校または欠席が多い

環境が変わることで自分も変わるかも――という気持ちはよく分かります。そして、その通りになってほしいとも思います。しかし、全日制高校への進学をきっかけに不登校から脱却するのは、残念ながら、思うほど簡単ではありません。

なかでも「学校生活に熱意がない」「なんとなく気力が湧かない」「人間関係がうまく保てない」といった理由で不登校が続いた中学生が全日制高校へ進んで心機一転するのは、周囲からのよほど手厚いサポートがないと、かなり難しいのではないでしょうか。

それでも、このタイプの生徒は「親にこれ以上心配をかけたくない」との思いから、不安を抱えながらも、無理をして全日制高校に進学することが多いのです。

不登校の状態(あるいは欠席が多かった状態)から全日制高校という新しい環境へ移ることは、練習なしに一気に高いハードルに挑戦するようなものです。問題を抱えていない生徒でさえ、失敗することがあります。

はじめはなんとか高校に通えたとしても、生活や学習の環境がこれまでとは大きく変わります。それに適応できず、またしても不登校におちいる可能性はけっして小さくはありません。高校で再び不登校を経験すれば、挫折感も、より深刻です。これは、ぜひとも避けてほしい事態です。

通信制高校なら、この危険を避けることができます。
なにより家庭での自学自習が中心ですから、中学での不登校が長かった生徒でも、大きく環境を変えることなく高校生活に移れます。ほとんどの通信制高校で学習スケジュールの管理や課題に取り組む際のアドバイスなどをウェブサイトや電子メールを通じて随時利用できますから、自学自習といっても、まったく一人きりではありません。

「通学型」で少しずつ不登校から脱却

親や先生は「全日制高校に通って、学校生活や友達づくりで社会性を身につけてほしい」と言うかもしれません。
それならば、通信制のなかでも「通学型」を選ぶ手があります。学校(学習拠点)に週1日から5日、あらかじめ日数を選んで通うスタイルです。他の生徒や先生と顔を合わせる、時間割に従って過ごす、学校によっては様々な部活動もあるなど、全日制高校と同じような学校生活が経験できます。

まずは週1日の通学から始めて、2年生になったら週3日、3年生で週5日といった具合に通学日数を段階的に増やすこともできます。スケジュールを柔軟に設定できるので、これなら無理をせずに不登校から徐々に脱却できそうです。

不登校の生徒でも、学校以外の場や人間関係なら苦にならない人がいます。そのような場合も、アルバイトして社会性や対人スキルを身につけながら通信制で学ぶという方法があります。

タイプ2 発達障害・起立性調節障害

グレーゾーンと呼ばれる軽度の発達障害を持つ生徒でも比較的学習しやすい環境なのが、通信制高校です。
2012年度の文科省の調査によると、全国の公立小・中学校の通常学級に在籍する児童生徒の6.5%に発達障害の可能性があります。

発達障害があっても中学校まではそれほどの問題もなく過ごしてきた生徒が、高校に入ると学校生活を続けるのがつらくなる場合があります。勉強についていけない、コミュニケーションがうまくとれず人間関係を維持できないなど、全日制高校の制度や環境、学習ペースに合わなくなるためです。

発達障害については学校関係者の理解が進んでいるにもかかわらず、たいていの高校ではそうした問題に十分な対処ができていないのが現状です。発達障害のある高校生への支援を行っている文科省の指定校もありますが、数は多くありません。

通信制高校なら、自宅学習を中心に自分のペースで勉強を進められますし、対面での会話が苦手でも電子メール・チャット・電話などの手段で教職員とコミュニケーションできます。継続的に対面授業を受けてみたい生徒も、たとえば週1日の通学から始めて、対人関係や場の雰囲気に少しずつ慣れていくことができます。

体調にあわせて学び方を設定

発達障害とは別に、起立性調節障害に悩む生徒もいます。軽症も含めると中学生の10%が起立性調節障害だと推計されています。また不登校の児童生徒の3~4割が起立性調節障害の症状を見せているそうです。

日本小児心身医学会によると、軽症なら適切な治療によって2~3か月で改善が見られるようですが、重症の場合は数年かかるケースもあるといいます。朝起きるのがつらく、午前中は、からだの具合が悪い日が多くては、全日制では高校生活を続けていくのが難しいでしょう。

起立性調節障害の中学生は、治療で改善を図りつつも、進学先として通信制高校を知っておくと安心できます。

通信制高校では、どんなスタイルで学ぶかを自分の体調に応じて選べます。自宅学習中心の「通信型」ならスクーリング(登校)日数が少ないので気持ちの負担になりません。一方「通学型」でも時間割を柔軟に設定しやすいので、体調のよい午後からの出席を多くすれば、毎日でも登校できるようになるでしょう。

タイプ3 勉強がかなり苦手

「この成績では高校に入ってから苦労するよ」と先生に言われたことはありませんか。そして、自分でもそんな心配を感じていませんか。

定期試験ではいつも赤点ぎりぎりか、試験の度に得点のムラが大きく成績が安定していない――そんな人でも、中学校ではなんとかやり過ごせるでしょう。しかし、同じ学習態度や成績では高校の勉強についていけないのは明らかです。

おそらく自分でも、このままではいけないと感じ、家庭教師を頼んだり、塾に通ったりしたことがあるかもしれません。けれども、成績が上って安定する前にやめてしまったのではないでしょうか。その結果、残ったものと言えば、勉強に対する苦手意識です。

中学時代から学力不振の生徒は、よほどの自覚と具体的な努力がないと、高校で成績を中程度にまで上げるのも難しいのではないでしょうか。

学年制の高校では、成績が基準に達しないと上の学年に進級できません。留年です。高校の先生方は、学期末や学年末が来るたびに留年の危険がある生徒に補習や追試をして、なんとか進級させられるくらいの成績に持ち込んでくれるわけです。

たびたびの補習や追試も、好きな部活動に打ち込んだり、仲のよい友達がいたりすれば、生徒の方もまだがんばれるものですが、そうしたものがない場合、勉強への嫌気がつもり重なって、高校生活を続ける意欲を失くす人も少なくありません。

留年の心配なく、自分のペースで学ぶ

通信制なら、そうした事態を避けることができます。ほとんどの通信制高校は単位制ですから、成績不振による留年はありません。しかも一般的には全日制高校よりも少ない修得単位数で卒業できます。学習の中心はレポートの提出ですが、これは基本的な学習事項の理解を試すもので、難しいものではありません。

それでも学習に不安がある生徒のために、個別指導、中学校の振り返り学習、習熟度別学習など、たいていの通信制高校では基礎学力をしっかりと身につける支援をしています。

内容をよく理解できないまま、いつも勉強に追い立てられ、気持ちに余裕のない全日制よりも、自分のペースで基礎学力を着実に身につける通信制――学力不振の中学生に適した進路選択といえます。

タイプ4 将来の目標がもう決まっている

将来の目標が、すでにはっきりと決まっている人なら、通信制高校が適しています。夢に向かって、より自分らしく時間を使えるのが、全日制にまさる通信制の長所だからです。そんな理由から、進学先を通信制高校にする中学生が増えています。

目標を早くから明確にして取り組むことの代表例が、スポーツと芸能です。プロを目指して既に中学時代から専門的なトレーニングやレッスンを始めている生徒がいます。あるいは中学卒業後に活動を本格化したいと考えている生徒がいます。むかしに比べると、通信制高校出身のスポーツ選手やタレントが増えているような気がします。

通信制高校では、生徒は時間割に縛られないので、目標本位の時間の使い方ができます。まとまった日数や時間数を自分のためにとっておけるので、トレーニングやレッスン、創作に集中できる長い時間がほしい生徒に適しています。

また通信制高校のなかには、芸能・芸術・理美容・調理・農芸・IT・ゲームなど、生徒の興味関心に応えるコースを開設している学校も多く、なかには在学中にかなりの実力がつくほどレベルの高いものもあるようです。このような特徴あるコースは、意欲をもって高校生活を送り、将来の進路選択をするうえで役立ちます。

早めに「適性チェック」ができる

高校生の大多数は専門学校か大学に進学してから興味関心のある分野の知識・技能を身につけます。しかし、自分の適性を見誤ってか、事前の情報不足のためか、専門学校や大学で勉強しているうちに意欲を失くし、資格取得もできないまま学校を変えたり、やめたりするケースもあります。

通信制の特徴あるコースで学ぶことは、自分の適性をチェックすることにもなります。いまの関心や興味が自分に合っていると確かめられれば、迷いなくその道を進めばいいし、どうも本当は合ってないと分かれば、高校のうちに早めに進路を変えることができます。

難関大学の入試に挑戦したい生徒にとっても、通信制は必ずしも悪くない選択です。中程度の学力がある生徒であれば、レポート課題をさっとこなし、あとは志望校の受験科目に集中して取り組むことができるからです。近年では大学受験に特化したコースを開設して受験指導の充実を図り、成果を上げている通信制高校も多くなってきました。

タイプ5 ひとつのことに集中できる

勉強やスポーツはあまり得意ではないけれど、これだけは人に負けない何かがある。周囲とコミュニケーションをとるのが苦手だけれど、なにかひとつのことに対する集中力や知識はズバ抜けている。――もし、あなたがそんなタイプだったら、通信制高校が学びやすいかもしれません。

コンピューターゲームやネット動画の撮影・投稿なら毎日、飽きずに続けられるという人はいませんか。そんな人を例にして説明してみます。

特徴あるコースを設けている通信制高校では、ゲームやプログラミングを専門的に学べる学校もあります。得意なゲームや動画編集などを将来の職業として意識するきっかけが作れるでしょうし、自分の適性を試す場にもできます。

勉強は嫌いだけれども、やりたい部活動があることが高校進学の強い動機になっている中学生は少なくありません。同じように、みんなが行くからなんとなく一緒に入る全日制よりも、自分の好きなゲームやプログラミングなどがもっと専門的に学べるような通信制の方が、ずっと充実した高校生活になるのではないでしょうか。

そんなふうに興味や関心が絞られている生徒には、全日制よりも通信制の高校が適しています。とくに必須科目以外の勉強は無駄と考えるような生徒には、必要最小限の修得単位で卒業できる点と、その分、自由な時間を多く持てる点で、通信制は合理的な選択です。

「好きなこと」を進学のきっかけに

ゲームやスマホを入口にして進学や進路選択を考えてみてもよいでしょう。「こんなにゲームが好きなら、プログラミングを学んでゲームを作るクリエイターになってみようか」「ユーチューバーになるなら、視聴回数アップのために英語も話せるといい」など、狭い興味関心からでも高校での勉強や進路選択へとつなげられるものです。

そうした指導は全日制高校でも可能ですが、「ひとつのことに集中する」生徒たちを数多く受け入れてきた通信制高校の方が理解もあり、指導例も豊富なはずです。

タイプ6 働きながら高卒資格を取りたい

通信制は、もともと働きながら勉強する人が学びやすいようにつくられた制度ですから、中学卒業後すぐに働きながら高卒資格を取りたいという生徒に適した進学先です。

働きながら高卒資格を取るのなら定時制という選択肢もありますが、通学や時間割の拘束が少ない通信制の方が、仕事・勉強・プライベートのスケジュールを柔軟に組めるので有利です。

「家計を助けたいから」「(バイクなど)自分のお金で買いたいものがあるから」「(店を持ちたい、海外に行きたいなど)将来の計画のために資金を貯めたいから」――中学卒業後にすぐに働く理由は様々でしょうが、アルバイトでも小遣い程度ではなく、目いっぱい稼ぎたいのであれば、全日制高校では無理でしょう。たいていの高校では校則でアルバイトを認めていないか、業種・時間帯を制約しています。この点、通信制なら学校が設ける制約はほとんどありません。

やる気の維持とスケジュール管理

ただ、注意すべきこともあります。
たくさん働いてまとまった稼ぎを手にできるようになると、「これなら高卒資格がなくても大丈夫」と思い、通信制高校で学ぶ理由を見失う心配があります。

また、仕事があまりに忙しいと時間不足や疲れから思うように勉強ができず、レポートの提出が滞り、ひいては学校が面倒になってやめたくなる生徒も出てくるかもしれません。

途中でやめず、卒業して高卒資格を取るなら、在籍する通信制高校の先生とよく連絡をとって、学習スケジュールの管理や生活アドバイスなどの助力を得ることが大切です。

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