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公立通信制高校と私立通信制高校を比較 メリットとデメリットは?

新しい学校選びの基準 ニュースクからのアドバイス

通信制高校にも公立と私立があります。学校数は、公立では通信制のみの独立校7校、全日制なども一緒の併置校71校。一方、私立では独立校110校、併置校69校。私立の通信制高校が圧倒的に多いのです(この記事のデータはすべて令和2年度「学校基本調査」から)。
では、私立の通信制高校のメリットを中心に、公立・私立の違いや特徴を詳しく見ていきましょう。

学費の安さだけで選んでいい?

なによりも学費の安さが公立通信制高校の特長ですが、その反面、多くの私立通信制高校に見られるようなコースやカリキュラムのバラエティには欠けています。高校卒業資格だけでなく、学ぶ楽しさや、将来の進路を考えるための刺激を求める人には、公立よりも私立が適しているのではないでしょうか。

いや高卒資格さえ取れればよい、と考える人には公立でも私立でも違いはなく、どちらでもよさそうですが、そうではありません。というのも、公立通信制高校の卒業率の低さが以前から言われているからです。

単位制で、3年か4年で卒業し、しかも全日制にくらべて転編入の多い通信制高校では、卒業率を単純に算出するのは難しく、公的な統計もありません。そこで「在籍卒業率」という考え方で、公立と私立を比較してみましょう。

「卒業率」が高いのは私立

「在籍卒業率」とは、在籍生徒数に対する卒業者数の割合です。この割合が33%であれば、3年生1学年が全員卒業したと、一応、見なすことができます(実際は33%以上になることもありますが、それは4年かけて卒業する人の数も入っているからです)。
令和元年度間の通信制高校の在籍生徒と卒業者の総数は、公立と私立、それぞれ次の通りです。

  公立 在籍生徒数55,427  卒業者数8,042
  私立 在籍生徒数151,521 卒業者数52,649

在籍卒業率を計算すると

  公立 14.5%
  私立 34.7%

私立通信制全体で見れば、在籍卒業率が33%を超えているので、ほとんどみんな卒業していると考えてよいでしょう。一方、公立全体では1学年分(33%)の4割程度しか卒業していないと考えられます。

かりに4年かけて卒業であれば、在籍卒業率25%で全員卒業と見なすことができますが、14.5%ではそれにも届いていません。学校関係者の間では、公立通信制の卒業率は10人に4~6人程度と見積もる声が聞かれますが、それを裏付けるような数字となっています。でも、公立と私立で卒業率にどうしてこんなに差がつくのでしょうか。

生徒支援の手厚さが私立の強み

最も大きな理由は、生徒の学習支援の違いでしょう。先生方一人ひとりは、公立でも私立でも、一生懸命に指導をしてくれているはずですが、教職員数が充実している私立の方が生徒支援は手厚くなります。
さらに私立の通信制では、基礎学力不足の生徒の学習支援をするサポート校が利用できます。教材類の充実とあわせて、これも私立の卒業率、しかも3年での卒業率が高い理由になっています。

私立ほどの教職員数がない公立では、きめ細かな指導が生徒にどうしても行き届きにくく、学力に不安のある生徒はレポート提出が滞って必要な単位が取れず、やがて卒業をあきらめてしまうことになりやすいのではないでしょうか。私立になら期待できるような個別指導や学校から生徒への積極的な働きかけが、運営上さまざまな制約のある公立では十分に行えない背景があります。

また、通信制高校では年に数回、登校して対面で学ぶスクーリングの授業がありますが、回数や日程、場所(各地のサテライトキャンパスなど)は私立の通信制の方が多様柔軟に設定でき、そのため生徒も参加しやすいので、確実な単位修得につながります。公立では私立ほどの柔軟な対応はできないでしょうから、諸事情でスクーリングに参加しにくい生徒は単位修得が難しくなります。

公立・私立、ニーズの違い

同じ通信制高校ではありますが、公立と私立には、ニーズの違いがあります。

定時制と並んで、もともと通信制高校は、働きながら学んで高校卒業の資格をとりたい人に対応した課程です。勤労者が学びやすい課程であることは、いまも変わりませんが、そこで学ぶ生徒の側に大きな変化がありました。

簡単に言うと、これまで通り、働きながら学ぶ生徒がいる一方で、全日制の環境や学び方が合わない生徒、全日制にはないカリキュラムや自由さを求める生徒が、通信制を選ぶようになってきたのです。その割合は年を追うごとに大きくなっています。

公立通信制高校の在籍生徒のうち20歳以上の大人が占める割合は約38%。対して私立では約3%です。公立と私立で役割分担がされているわけではありませんが、おもに勤労者以外の生徒を受け入れているのが私立の通信制高校です。

公立通信制は勤労者にメリット

公立通信制のいちばんのメリットは学費の安さです。とくに生徒が自分で学費を払う場合は、大きな魅力です。おおむね年間4万円~6万円で済むようですから、アルバイトでまかなうことができます。働きながら学習して高卒資格を取りたい生徒が多く集まる理由でもあります。

スクーリングは毎週土曜か日曜の1回のみ、というケースが多いようです。スクーリング場所となる学校は、立地にあまり恵まれず、やや通いづらいこともありますが、マイカー通学ができる人にはデメリットにはならないでしょう。

通信制高校では、入学できる生徒を学校所在地と同じ都道府県か隣接する1県に住む人もしくは勤める人に限ることがあります。これを狭域通信制高校と呼びますが、多くは公立の通信制高校です。

私立通信制は選択肢の多い広域校

私立通信制高校のメリットは、すでに述べてきた卒業率や生徒支援の手厚さ、カリキュラムの多彩さほか、いろいろと挙げられます。

もうひとつ知っておきたいのは、私立の通信制高校の多くは、3つ以上の都道府県から生徒を募集できる広域通信制高校だということ。なかには全国から生徒を募集している学校もあります。これは学校選びの選択肢が多い、ということです。

公立にくらべると学費が高いのは確かですが、2020年春に就学支援金制度が拡充され、授業料については納入がゼロになる場合もあります。世帯年収や授業料の設定額によって異なりますが、全般にこれまでよりも学費負担が軽くなっています。

公立か、私立か――案内資料を取り寄せたり、学校説明会・体験入学に参加したりして、通信制高校の教育内容をよく見極めて、ぜひ納得のいく学校選びにつなげてください。

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