通信制高校・高等専修学校ニュース

強迫症と高校進学

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頭から消えない考え(=強迫観念)と、そのために生じた強い不安を打ち消そうとする行為(=強迫行為)に支配され、日常生活に大きな支障が出るのが強迫症です。強迫性障害と呼ばれていたこともありました。

強迫症は、思春期に現れることが多い病気です。精神科外来患者の1割強がこの病気で、強迫症と診断された人のうち3割は15歳くらいまでに発症しているそうです。

100人に1人の割合で発症するといいますから、強迫症に苦しむ人は私たちが思っている以上に多いようです。

何度も確認せずにはいられない

強迫症の症状は、おおよそ次の3つに分かれます。

確認系…ガスコンロを消したかどうか、玄関ドアに錠をかけたかどうか、何度も確認せずにはいられない。

汚染/洗浄系…ばい菌などの感染・汚染を極度に恐れ、手洗いや入浴を何度も繰り返す。

ぴったり系…何かする際に自分にしっくりくる感覚や完璧を求めて、その行為を何度も繰り返す。

抗うつ薬の投与や、強迫行為を我慢させる認知行動療法によって、強迫症の症状改善が図れます。しかし、放っておくと約半数の人は生涯にわたって症状に悩まされるとの研究もあるそうです。

家族を振り回す「巻き込み」

落ち込む生徒と親

強迫症に多く見られる特徴のひとつに「巻き込み」があります。本人の強迫行為に家族が付き合わされることです。

専門家から次のような例を聞いたことがあります。

ある強迫症の女子は、ばい菌に対する異常な恐怖が心を占め、汚染を避けるための確認行動を何度も繰り返すために、日常生活が成り立たなくなりました。同居する家族は、それに振り回されます。巻き込みです。

この女子は、ばい菌がつくのではないかと恐れ、服の着替えができなくなりました。さらには自宅のトイレも使おうとせず、オムツを着用します。自分のベッドに横たわることも避けて居間で座ったまま眠るので、脊椎湾曲症になるほどでした。

食事をつくる母親を常に監視し、少しでも意に沿わないことがあれば、最初からやり直しをさせます。母親が従わないと自傷行為に及びます。一緒に食事することを嫌って、弟には玄関で食事をさせたといいます。

本人の不安解消になるのであればと、家族はできる限り強迫行為に付き合うのですが、そうした巻き込みによって症状が改善することはないそうです。むしろ、その分、回復が遠のくというのが専門家の見解です。

上記の女子の場合、薬物治療が効を奏し、3か月ほどですっかり正常に戻ったといいます。

不安の少ない環境で勉強するなら通信制

家で学習する女子生徒

専門医の治療や公認心理師の指導によって強迫症の人の多くに改善が見込まれますから、強迫症は必ずしも進学の支障とはなりません。

ただ、学習や人間関係などが中学時代よりも一段と複雑高度になるのが高校です。それに対処するストレスが、強迫症の症状悪化や再発につながる恐れがあります。

学校生活の中で何が強迫観念の引き金になるか、わかりません。しばらく良好に過ごせていても、よりによって大切な試験の時に症状が出る場合もありえます。たとえ強迫行為が周囲に気づかれない程度で済むにしても、本人の心にかかる負担はけっして小さくないでしょう。

学校に比べて、こうした不安をできるだけ回避できる、比較的ストレスが少ない場所は自宅だと思われます。強迫症というものを理解している家族がいることも安心材料です。自宅学習を中心にして高校卒業をかなえられるのが、通信制高校です。

強迫症のために全日制高校での学校生活が続けられなくなっても、バックアッププランとして通信制高校への転入があります。

あるいは、最初から通信制高校へ進んで、不安要素をできるだけ少なくして学習を続ける選択もあります。

どちらにしても、通信制高校のことをあらかじめ知っておくと、進路選択に気持ちの余裕ができます。